歯周内科治療を開始しました!
当院では、このたび歯周内科治療を開始することになりました。歯周内科治療は、今までと違ったアプロ-チで歯周病の改善を図る治療法です。
⚫︎なぜ今、歯周内科治療をはじめたのか
「全身の健康1丁目1番地はお口から」と言うように、歯周病菌と全身疾患とは、大きく関連しています。例えば、糖尿病、リウマチ等の免疫疾患、心筋梗塞等の心臓疾患、脳梗塞等の脳疾患などなど、多くの全身疾患と関連があると判っています。
特に糖尿病に罹患されている患者さんは、たいてい重度の歯周病の罹患者であるとともに、相互に関連していることは、すでに報告されています。
みなさんもご存じのように糖尿病による合併症は、網膜剥離、腎機能の低下等などシビアなものばかりで、生命の危機につながる恐ろしい病気です。
かなり前から、糖尿病が悪化している患者さんは、それに伴い歯周病も悪化することはすでに判っていました。しかし、ちょっと前からは逆に歯周病が悪化すると、それに伴い糖尿病も悪化するということも判ってきました。ということは、歯周病を改善すれば、糖尿病も同時に改善できるのです。
そもそも、歯周病になる原因は何でしょうか?人間のお口のなかには、多種多様で数多くの細菌が常在菌として存在しています。その細菌のバランスが、何らかの理由で崩れてしまうと歯周病が悪化するのです。
その為、このバランスを正常な状態にコントロ-ルしない限り歯周病は自然と悪化してしまい、歯を支える骨を腐らせ、歯を失ってしまうことになるのです。
私たちがコントロールし抑えたいのは、お口の中にいる多種多様で数多くの常在菌です。
医科の領域であれば、通常その細菌を攻撃してくれそうな抗生物質を投与するのがファ-ストチョイスです。
しかし歯科においては、細菌の集合体である歯石を出血を伴いながら(もちろん健康的な歯茎の患者さんはほとんど出血を伴いません)除去していくのが、歯科の今までのやり方です。もちろん、その方法が間違っているとは言えません。歯石は除去できるのですから・・・。
でも、残念ながら出血を伴うと、歯周病菌は身体に入り、いろいろな臓器に散らばります。
そのため、献血される場合には2~3日前に歯石除去をされた方は、献血できないことになっています。
上記のことを踏まえて、今までの歯周病治療に異を唱え、新たな歯周病治療法を提唱されのたが、天草で診療されている生田先生です。私も20年ほど前に教えていただきましたが、当時の私には半信半疑でした。しかしながら、またお話を聞く機会がありました。
さらに、当院でも定期的にきちんとメンテナンスに来院されても、いつも出血されて歯周ポケットがなかなか改善されない患者さんが多くおられましたので、これを機会に再度しっかり勉強させていただき歯周内科治療に期待をもつことができましたので、当院でも歯周内科治療をとりいれようと思った次第です。
この動画は、当院で歯周内科治療を頑張られた患者さんの位相差顕微鏡動画です。上は、治療前の動画です。いろいろな型の菌が激しく動いているのがわかります。下は、投薬後の動画です。常在菌なのでゼロにすることは不必要ですが、菌の量も少なくなりましたし、また菌の活動も抑えられています。
今後この患者さんは、毎日のブラッシングは勿論ですが、定期的にメンテナンスを続けていただき、この菌の活動性をおさえられた状態を維持していただくことになります。
⚫︎歯周内科治療の概要
それでは具体的に歯周内科治療とはどういうことをおこなうのか、概略ですがご紹介いたします。
★PCR検査
コロナ感染で有名になったPCR検査です。お口のなかにいる細菌のDNA検査で悪玉菌の種類・数を測定します。この結果を参考にして投与する抗生物質を選択します。
★ブラッシング指導
歯磨きがきちんとできないと、やはり効果が下がりますので、正しいブラッシングの方法を覚えていただきます
★位相差顕微鏡
お口の中の歯垢を採取して、位相差顕微鏡でどういった種類の菌種がいるのか、さらに菌の活動性を確認します。
★お薬の処方
PCR検査の結果と位相差顕微鏡の検査をもとに服用していただく抗生物質を決めます。
通常は、医科でも歯科でもよく使用されているジスロマックという抗生物質を3日間服用、同時にファンギゾンシロップというお薬で歯磨きを1週間程度1日4回、1回5分ほど、新しい歯ブラシに交換していただき、歯磨きをしていただきます
★バクテリアセラピ-
ロイテリ菌は、口腔内の悪玉菌を抑え口腔内環境を整えてくれるサプリメントです。このロイテリ菌を含んだ「バイオガイア」というサプリメントを服用していただきます。サプリメントですので、抗生物質のように耐性菌の心配はありません
★ペリオバスタ-Nあるいはナノペリオ(ヒノキアレルギ-のある方)での歯磨き
上記の2種類は、歯周内科治療のために特別に開発された歯磨き剤です。
上記が主な概略です。その後は投薬などせず、ご家庭での正しいブラッシングを毎日続けていただくのと、一般的な定期的なメンテナンスをおこないます。これで再発を防ぎ大事なお口の健康、ひいては全身の健康を維持ができるのです。